矯正後の後戻りで口元が気になる再矯正と顎の手術はどう選ぶ?
以前に矯正治療を受けたものの、時間がたって歯並びや口元の変化が気になり、再治療について相談したところ「もう一度の矯正は難しい」と説明されることがあります。さらに「セットバック」という手術を知ると、手術なら改善できるのか、費用や入院期間、仕事へ戻れる時期はどうなるのかと迷うかもしれません。大切なのは、手術名を先に決めることではなく、現在の歯・歯ぐき・骨・かみ合わせ・あごの位置を確認し、どの方法が適応になるのかを整理することです。
個人が特定されないよう、相談内容を再構成しています。
この記事のポイント
- まずは以前の矯正治療を担当した医院へ再相談するのが一般的です。
- 相談が難しい場合は、大学病院や矯正歯科を専門的に診る歯科医師へ相談します。
- 「セットバック」という言葉だけでは、想定している手術内容が一致しないことがあります。
- 現在の診察・検査を行わなければ、再矯正や手術の適否は判断できません。
- 入院期間、腫れ、仕事復帰、費用には、術式・施設・体の状態による差があります。
医院からお伝えしたのは「手術を決める前に、再相談と再評価を行うこと」です
今回のもとになった相談では、以前の矯正治療後に歯並びや口元の変化が気になり、再治療が難しいと説明されたため、顎の手術も含めてどこへ相談すればよいか迷っていました。その後、手術を受けた場合にすぐ仕事へ戻れるのかという追加の質問もありました。
駒沢よしや矯正歯科からは、まず以前の矯正治療を担当した医院へ再相談するのが一般的とお伝えしました。以前の医院では、治療前の状態、当時の検査資料、歯をどのように動かしたか、治療後の保定経過などを確認しやすいためです。
以前の医院での相談が難しい場合は、大学病院や矯正歯科を専門的に診る歯科医師へ相談する選択肢があります。相談先を探す手がかりとして、日本矯正歯科学会の認定医・専門医などの検索ページも案内しました。
また、「セットバック」が何を指しているのか、相談者と医療者の間で共通理解が必要であり、現在の状態が分からなければ適切な回答はできないとお伝えしました。手術を希望していても適応にならない可能性があるため、矯正歯科で診察・検査を受けてから判断することが重要です。
まず以前の治療を担当した医院へ相談する理由
矯正後の変化を評価するときは、現在の歯並びだけでなく、治療前の写真やレントゲン、抜歯の有無、歯の移動量、治療終了時のかみ合わせ、保定装置の種類と使用状況などを比較します。以前の担当医院は、これらの資料を保管している可能性があります。
一方で、資料が確認できない、説明に納得できない、外科的治療を含めた評価が必要と思われる場合は、大学病院や別の矯正歯科へ相談します。転院や再治療を希望するときは、以前の医院へ検査資料や治療経過の提供が可能か確認すると、次の診察に役立ちます。
「セットバック」が何を指すのか、最初に確認します
「セットバック」という言葉は、あごや歯を後方へ移動する治療を広く表して使われる場合があり、相談者と医療者、あるいは医療機関ごとに想定する術式が同じとは限りません。
そのため、「セットバックができますか」と尋ねるだけでなく、どの骨または歯を、どの術式で、どの方向へ動かすことを想定しているのかを確認する必要があります。下あごの骨を動かす下顎枝矢状分割術、別の骨切り術、歯を動かす再矯正では、目的も負担も異なります。
言葉の意味が共有されないままでは、入院期間や費用、仕事復帰についても正確に比較できません。相談時は正式な診断名と術式名を確認します。
口元が気になるからといって、顎の手術が必要とは限りません
口元の見え方には、前歯の傾き、上下の歯列の位置、かみ合わせ、あごの骨格、唇などの軟組織が関係します。以前の矯正治療後に変化が生じていても、歯の後戻りが中心なのか、骨格的な問題があるのか、歯ぐきや歯を支える骨の状態から再び歯を動かせるのかは、相談文や写真だけでは判断できません。
現在の口の中、かみ合わせ、横顔、歯根、歯槽骨、歯周組織を診察・検査した結果、再矯正が候補になる場合、外科的治療を検討する場合、積極的な再治療を勧めない場合があります。手術を希望していても、診断の結果、手術の適応にならないことがあります。
下顎枝矢状分割術を想定する場合、短期間での仕事復帰を前提にしません
相談で想定している手術が下顎枝矢状分割術であれば、元の医院回答では、一つの目安として約2週間の入院と、顔の腫れが3か月ほど残る可能性をお伝えしました。
自治医科大学の顎変形症専門外来の案内でも、顎変形症手術の入院期間は多くの場合約1〜2週間、軽い腫れが術後数か月残ることがあるとされています。ただし、術式、移動量、全身状態、施設の方針によって異なります。
退院できる時期と、会話・食事・通勤を含めて普段どおり働ける時期は同じとは限りません。仕事の内容によっても必要な休養期間が変わるため、「何日後に必ず復帰できる」とは断定せず、手術を担当する口腔外科へ確認します。
費用は、診断と治療を行う施設が決まってから確認します
再矯正や顎の手術の費用は、診断、術式、術前・術後矯正の有無、入院する施設などで異なるため、相談文だけから金額を示すことはできません。
一般的な矯正治療は自費診療ですが、顎変形症と診断され、顎の手術を前提として行う術前・術後の矯正治療は、所定の施設基準を満たす医療機関で保険診療の対象になる場合があります。口元を改善したいという希望だけで自動的に保険が使えるわけではなく、診断と治療計画の確認が必要です。
再相談のときに確認したい8つの項目
- 現在気になっているのは、歯並び、かみ合わせ、口元のどの部分か
- 以前の治療前後の写真、レントゲン、治療計画などを確認できるか
- 変化の中心が歯の後戻りなのか、骨格的な問題なのか
- 歯根、歯槽骨、歯ぐきの状態から再矯正が可能か
- 検討している手術の正式な術式名と目的
- 入院期間、腫れ、食事、会話、通勤への影響
- 治療全体の期間、費用、保険適用の条件
- 再矯正や手術を行わない場合の選択肢と限界
再治療の可否や方法は、現在の状態だけでなく、以前の治療内容との比較で判断します。資料が手元にない場合も、どの資料を取り寄せるとよいか相談先へ確認できます。
相談時に持参・確認したい資料
- 以前の治療前後の顔貌写真・口腔内写真
- パノラマ・セファログラム・CTなどの画像資料
- 抜歯した歯、使用した装置、治療期間が分かる記録
- 治療終了時と現在の保定装置
- 保定装置の使用状況と、変化に気づいた時期のメモ
- 現在の主治医から受けた説明や紹介状
よくあるご質問
矯正後の後戻りは、以前と同じ医院へ相談すべきですか?
まずは以前の治療を担当した医院へ相談するのが一般的です。治療前の状態、当時の検査資料、治療計画、保定の経過を確認しやすいためです。相談が難しい場合は、大学病院や矯正歯科を専門的に診る歯科医師への相談を検討します。
「セットバック」と言えば、希望する手術内容は伝わりますか?
必ずしも伝わるとは限りません。「セットバック」が指す内容は文脈によって異なるため、正式な術式名、動かす骨や歯、治療の目的を医療者と共有することが必要です。
顎の手術後、すぐ仕事へ戻れますか?
一律には言えません。下顎枝矢状分割術を想定する場合、入院は多くの場合約1〜2週間で、軽い腫れが数か月残ることがあります。術式、施設、回復状態、仕事の内容で異なるため、復帰時期は手術を担当する口腔外科へ確認します。
顎の手術や術前・術後矯正には保険が使えますか?
顎変形症と診断され、顎の手術を必要とする場合の術前・術後矯正は、所定の施設基準を満たす医療機関で保険診療の対象になることがあります。すべての再矯正や口元の改善が対象になるわけではなく、診察・検査による診断が必要です。
再矯正・外科的矯正治療のリスクと限界
この記事は一般的な情報提供を目的としています。再矯正や顎の手術の適否は、歯並び、かみ合わせ、歯根、歯槽骨、歯周組織、あごの位置、全身状態などを診察・検査して判断します。矯正治療には、痛みや不快感、虫歯・歯肉炎、歯根吸収、歯肉退縮、後戻りなどのリスクがあります。顎の手術には、腫れ、痛み、出血、後戻り、知覚の変化を伴う神経損傷、顎関節の問題などが生じる可能性があります。手術方法、入院期間、回復、仕事復帰、治療結果には個人差があり、希望した変化を保証するものではありません。
監修
駒沢よしや矯正歯科 院長 吉屋 慶章
日本矯正歯科学会認定医。矯正治療後の後戻り、再治療、口元やかみ合わせについての相談を行っています。
矯正後の変化や再治療について相談したい方へ
初診相談では、現在の歯並びやかみ合わせを確認し、必要な検査と相談先を整理します。外科的治療を含む判断が必要な場合は、矯正歯科と口腔外科の連携を前提に考えます。
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